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……などという二人の過去を、超能力者でもない四天王寺が知る由もない。
兄貴は一体どうしてしまったのだろうと、愕然とするばかりである。
「いやー、前の転生の時はなんか合戦的なところで会えたけど、話をする前に二人して鉄砲で撃たれたもんなあ」
「最近能力はほとんど継承されなくなったからな。ちょっとしたことですぐ死ぬな」
何を言っているのかよく分からない。
その女子高生とは、オンラインゲームの戦友か何かなのだろうか。
「積もる話もあるし、とにかくこれからどこか飯でも」
「いいねー」
雲行きが怪しくなり、生真面目な舎弟は慌てて口を挟んだ。
「待っ……、あ、兄貴?これからオヤジのところに行くんじゃ」
「……そうだった。お前も一緒にくるか?」
「いやいや、事務所に女子高生連れ込むとか、通報されて痛くもない腹を探られることになりますよ!」
警察なんて怖くない!…と言いたいところだが、怖くなくても犯してもいない罪で絡まれるのは御免である。
いや兄貴。なんで「えー?」って顔になるんすか。
「じゃあ俺が組をぶっ潰せばいいんじゃね?」
あっけらかんと恐ろしい、女子高生のバイオレンス過ぎる提案に、ついに四天王寺はキレた。
「怖ァ!お前はなんなの!?セーラー服の下に機関銃とか仕込んでるの!?」
「お前の部下気が小さいな……」
「昨今のヤクザは肩身が狭いからな。じゃあ連絡先交換して、また後日仕切り直すか」
「そうだな。私服で会えばもう少し普通の知り合いっぽいだろ」
「ぽくねえよ!犯罪の匂いしかしねえよ!」
「四天王寺、うるせえ。行くぞ」
ようやく、お互い行こうとしていた方角に再び歩き出すと、不意に女子高生は振り返り手を振った。
「四天王寺、またな~」
「お前は呼び捨てにするな!」
兄貴分にうるせえぞと叱られながらも、今後どうなってしまうのか、猛烈に嫌な予感が殺せない四天王寺であった。
終
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