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東大寺に来た。「道行かば腹が鳴るなり東大寺」と彼は言った。
「それ、柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺じゃないですか?」生徒の一人は言った。
「そうかもしれない」彼は笑った。
「こうして道を歩くことができることに感謝しなさい」
「パクリの俳句をごまかしているのですか?」
「そういうことではないと思うけど」
「先生あのさ」
「どうしたい?」
「いいけど」
女子生徒に少し笑われたが気分よく道を行った。
「あとで鹿のいるところに行くから」
「鹿?」生徒たちは顔をほころばせた。
「鹿」彼は答えた。
「鹿せんべいなんて売っているのですか?」
「知らん」彼は面倒な生徒はいない高校の教師だった。
「千手観音なんて見れたらいいな」生徒は言った。
「君普段より優等生だな」
「どうしてですか?」
「いや何となく」何故か彼は生徒に向かって言いたかったのであった。高校三年生の集団を引き連れて彼は道を行ったのだった。
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