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美咲がそう答えると、凌に不意に手を掴まれる。美咲が驚いて凌の顔を見れば、彼の顔は真っ赤になっていた。凌は酔っても顔が赤くなるタイプではなく、アルコールのせいではないということだけはわかる。
「もうやめにしない?お見合い」
「やめたら結婚できないじゃん」
普段、凌はこんなことを言わない。いつだって「次はいい奴に会えるって!」と応援してくれていた。こんなことは初めてで、美咲はますます戸惑ってしまう。
「好きだ」
はっきりと凌は口にした。綺麗とは到底言えない古い居酒屋で、何のロマンもない告白である。ドラマや映画のワンシーンのような感動はどこにもない。それでも、凌は真っ直ぐ美咲を見つめて言う。
「ずっと好きなんだ。お見合いするって気持ちを諦めようと思ったけど、もう我慢しない。俺を見てほしい。俺と結婚してほしい。共働きでもいいし、美咲が望むなら俺が専業主夫になる。牛丼とか豚カツ一緒に食べたいし、一緒に乗る車だって選びたい。どうかな?」
美咲の空っぽだった心が騒つく。一瞬にして美咲の顔も赤くなった。だが、それはアルコールのせいではないと自分がよくわかっている。
百回目の振られた日は、美咲にとって特別な日になってしまった。
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