失恋百回記念日

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傷付いたはずの思い出だというのに、凌の前では何故か笑いながら話すことができる。美咲はビールを勢いよく飲んだ後、近くにいた男性店員を呼んだ。 「すみません。梅酒ロックとあん肝お願いします」 「か、かしこまりました……」 店員は恐らく大学生のアルバイトだろう。ジロジロと美咲のことを上から下まで見て、驚いたような顔をしている。美人な女性が居酒屋でビールを飲んでいる光景が信じられないと言いたげなものだ。 「折山ってさ、ワインとかよりビールとかの方が好きだよな。おしゃれなレストランより居酒屋の方が喜ぶし」 「だって、居酒屋の方が気が楽じゃん。おしゃれなレストランって自分が何食べてるかわかんないし、マナーも不安だし。ワインよりビールで何が悪い。フレンチやイタリアンより牛丼が好きで何が悪い。車が好きで何が悪いって感じ」 そう言いながら、美咲はガーリックたっぷりのジャーマンポテトを食べて「おいしい」と言う。それを見ていた凌は少し緊張した様子で訊ねた。 「またお見合いすんの?」 「ん〜、スタッフさんが紹介してくれたらまたするつもりだよ」
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