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パチパチ、パチ。
パキ、パキ。
夜、サンタは1人でした。
暖炉から鳴る音に、サンタの咳が重なります。
「ゴホゴホ!今日は冷えるな。……寒い、な。もうすぐ12月だもんな、当たり前か。はは。」
笑い声は寂しそうでした。
それはサンタが1人だからでしょうか?
それとも別の理由でしょうか?
サンタはアンの言葉を思い出します。
「……魔法がなくてもいい、か。あれからずっと。どうしようどうしようってずっとずっと考えてみたけど。……ははは。僕、やっぱりバカだからさ。」
サンタは指を鳴らそうとしました。
そんなサンタの指を、ロゼは両手で包み、止めました。
サンタのそばにやってきたロゼは、泣いていました。
「お願いだから、もう、やめてよ。」
「…ごめん。ゴホゴホ!」
「もう、やめて。だって…だって……。」
やめてと言ってやめたとしても。
もう、すでにそれは遅いこと。
もうどうにもできないことだとわかっているから。
ロゼの涙は止まりません。
浮かんでくる思い出に嬉しさはあるけど後悔もあるから。
後悔が生まれてしまったから。
サンタは謝るしかありません。
もう、どうしようもないから。
サンタの咳は治りませんし、寒気も止まりません。
「あなた…あなた死んじゃうのよ⁉︎」
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