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高橋(桃)
背が高くて、美男子で、赤茶色の綺麗な髪の毛…。女子たちが遠巻きでいつも騒いでいる。
美術部の私の描きたい欲をくすぐる存在だ。
いつも寝ているか、退屈そうな顔で携帯を操作している佐藤君。
他のクラスの茶髪男子たちが休み時間に彼の周りに集まって来る。
友達といる時はすごく楽しそうに笑っている。
うちのクラスで佐藤君と話すのは似た様な髪色をした田中さんだけだ。
私とは世界が違う。
「順番関係ないからどんどん受けに来て」
音楽の授業の後半、先生が準備室に入って行った。
まだ自信がなくて練習をする人たち、さっさと済ませたくて準備室前に列を作る人たち。半々くらいだ。
私は一度だけ練習をしてから列に並んだ。
問題なくリコーダーのテストを終え席に戻る。
列の人数が8人になった所でチャイムが鳴った。
「今間に合わなかった人は今日中に受けに来る様に‼︎来ないと成績付かないからなー」
「えー…マジかよ」
準備室から出てきた先生は、自分の時間配分のミスを詫びる事もなくそう告げた。
帰り道途中のコンビニで佐藤君を見かけた時、私は友達の制止を振り切って茶髪集団に駆けて行った。
「ありがとう。助かった」
そう言って笑った佐藤君があまりにも綺麗で、私は言葉を失った。
その日からずっと、彼の笑顔が忘れられない。
描きたい。描きたい。佐藤君を描きたい‼︎
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