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私は、確か引っ越した家で火事に巻き込まれて死んだ。
この家は、火事があったときのまま。
二階に上がるための階段はボロボロ。
一階部分は、リビングだけが残った。
玄関もキッチンも、火事の後に崩れてしまった。
パパもママも生きてるのに、私だけ死んだ。
しかも、幽霊になってしまった。
成仏できないのは、初恋の彼にお別れが言えないままだから。
そんなこと考えてたら、神様が私に優しくしてくれたの。
「ほんとに幽霊なんて出るのかよ」
なんて言いながら、家に来た男の子。
また、事故物件に凸りに来たクリエイターか…。
って落ち込んでいたら、違ったの。
彼は、私の心残り。
成長した彼は、当時よりもとってもかっこよくなっていて。
大好きな彼のままだった。
だから声をかけて、色々話したの。
「また、会えたね。もう、会えないかと思ってた…」
私、あの時から、今までずっと君の事が大好きなんだ。
目が覚めたら、俺は病院にいた。
「大丈夫かしら…。あなた、空き地の真ん中で倒れていたのよ。私が出勤時に見つけたから死ななかったみたいだけど…」
白衣の天使が、俺にあれこれ言ってくるが頭に入ってこない。
「あ、この手紙、あなた宛てだったから持ってきたけど、いらなかったら捨てていいから。私は仕事に戻るから、何かあったらナースコールして頂戴」
天使がどこかに行った後、俺は自分の右側のデスクに置かれた手紙を読むために起き上がった。
差出人は、初恋の彼女で、最後の手紙になってしまってごめんね。と一行目に書いてあった。
続きを読もうとしても、二行目以降は文字がかすれていて読めない。
でも何となく内容はわかった。
彼女が生前、俺にくれた手紙と同じ内容だったから。
「文字じゃなくて、君の口から聞きたかったよ」
俺は優しくないから、君に聞こえないように、心の中で好きだと唱えた。
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