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ピイィィィィィーーーーーーッッ
試合終了を告げる笛が鳴り響いた。
それは夢の終わりを宣告する。
入部当初から先輩達が掲げていた目標。
『地区優勝』
ただひたすらに、ボールを追いかけた日々。
その集大成の大会が、準決勝敗退という形で幕を閉じた。
ボールを突く音も、ゴールネットを揺らす音も。
私たちが最後まで振り絞って出した声も。
何も聞こえなくなった体育館で。
私はただ一人、コートを見つめていた。
ほんの数分前まで、ここには“熱”があった。
一つのボールを追う激しい足音に歓声。
夢破れた先輩達が、肩抱き合って泣く声。
それが今はそれこそが幻だったんじゃないかという静けさ。
「女子も、終わったか」
スッと音もなく隣に並んだのは、男子バスケ部の辻。
男子は前日、三回戦敗退で幕を閉じていた。
「うん。勝てなかった」
一年でまだまだ実力が足りない私はレギュラーになれなかったけど。
それでも一緒の夢に向かってたし、叶えたかった。
叶わなかった瞬間、涙が零れそうになったけど、泣けるほどの努力を私はまだしていない。
「悔しい……」
夢が終わってしまった事も。自分が何もできなかったことも。
「そうだな」
目の前のコートを見つめたまま、私たちはお互いの心情がリンクしていた。
「来年、絶対に叶えてみせる」
決意を口にした瞬間、辻が私の頭をクシャッてした。
「そうだな。来年こそお互いに叶えよう」
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