1on 1

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「勝負?」  思いがけない言葉に、私は思わず辻を見る。  辻はにやっと笑って、持っているボールを私にパスしてきた。  柔らかくパスされたボールを、しっかりキャッチする。 「1on1、しようぜ」 「1on1?」  突然の提案に私は首をかしげる。 「そ。たまには気分転換によくね?」  今までの朝練で、やったことはなかった。  やったことあるのはあくまで私の練習のために辻が軽くディフェンスしてくれるくらいだ。 「ガチでやるの?」 「そりゃ、ガチじゃないと面白くないだろ?」 「どう考えても私が不利じゃん」  なんだかんだでバスケは高さのスポーツ。  身長差十五センチはある私と辻じゃ、絶対に私が不利だ。 「なんだよ。やる前から諦めんのか?」  そう言われると、なんだかムカつく。 「俺を抜いてシュート決めたら、ジュースおごってやるよ。お昼に購買のプリン付きでどうだ?」 「本当!?」  購買のプリンはお手頃値段で美味しくて、大人気。  それゆえ競争率も高くて、買うのも激戦なんだ。 「その勝負、のった!」  ボールを右手で弾ませて、私はゴールに目標を定める。  単純に高さだったら確かに勝てないけど、スキをついてフェイントをかける。それでスピードにのってシュートだ!  脳内で作戦をしっかりたてて、私はセンターラインで構える。 「じゃ、いくよ」  ドリブルをついて様子を見る。辻も余裕の表情だ。  問題はどうやってスキをつくか、だ。 「あ、そうだ」  辻が思いついたように声を出す。 「なに?」 「俺が勝ったら、キスね」  ━━━━っっ!? 「隙あり」  あっさりとボールを奪われた。
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