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あれから毎朝。朝練があるときはそれよりさらに三十分早く。
私たちは体育館で練習した。
主に私のシュートフォームのチェック。
悔しいけど、辻のアドバイスは的確で。
私は少しずつ、シュートタッチが戻りつつあった。
「余計な力が入り過ぎなんだよ」
私がシュートを打ち続けて、辻はゴール下でボールを拾ってくれる。
「疲れてくると焦りがち。疲れてる時ほど肩の力は抜けよ」
「簡単に言うけど、それが出来たら苦労しないよ!」
私の抗議を遮るように、辻は数回ドリブルをついてシュートする。
綺麗な弧を描いて、吸い込まれるようにゴールネットを揺らした。
「な。こんな感じ」
……むっかつくー!
だけど、そうして見せてくれるシュートフォームは本当に綺麗で。
打った瞬間、時が止まったように見えるんだ。
最近は週末には練習試合を組まれることも増えてきて。
うちの高校で試合をする時はこっそり見に行ったりしてる。
うちの男バスは決して強いわけじゃない。
だから試合も負けることも多い。
だけど、最後まであきらめず。ボールを追い続けて。
何より瞳が諦めていない。
そしてチームメイトを鼓舞する辻の姿は、誰よりコートで輝いていた。
……なんだか悔しいから、絶対にそんなこと言ってやらないけど。
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