1on 1

7/12

44人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
 下校からまだそれほど時間が経っていなかったこともあり、先生からも特に注意されず、職員室に鍵を返却した。  さて、帰ろう。  そう思っていたら、体育館の明かりがまだついていることに気づいた。  ━━誰か、まだいる?  近づくと、ボールの弾む音が聞こえる。  部活の時間終わってるのに、まだ誰か練習してる?  そっと覗いてみれば、シュート練習を繰り返している男子がいた。 「……辻?」  シュートを放ち、ボールを取りに行き、ドリブルでフェイントを加えながらまたシュート。  黙々と打ち続けている。 「東条?」  覗き見していた後ろから急に声をかけられて、ビクッとする。  振り返れば男バスの顧問の先生がいた。 「どうした?こんなところで」 「あ、いや」  別に悪い事しているわけじゃないのに、こっそり覗いていたのがバレて、何だか気恥ずかしい。  でも先生も私が何を見ていたのか、すぐに気がついた。 「まーたやってるのか。辻」 「また?」  先生は首をすくめて教えてくれた。 「あいつ。ほおっておくと全然帰らないんだよ。ずっと練習しっぱなし」 「そうなんですか?」 「三年が引退してからな。熱心なのはいいが、体を酷使するのは故障の原因にもなる。気づいたらやめさせてはいるんだが。しょうがないな」  そうボヤキながら先生は体育館へと足を進めていった。  先生と少し言葉を交わして、辻は片付け始めた。  なんとなく、私は辻と顔を合わせられなくて、そのまま体育館に背を向けた。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

44人が本棚に入れています
本棚に追加