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「あー、今日も一日疲れた!」
お風呂からあがってベッドに身体を投げ出す。
軽い反発を身体に受けて仰向けになり、思い出したのはさっきの辻の姿だった。
試合中の真剣な姿は見たことあるけど。
練習であんな辻の姿を見るのは初めてかもしれない。
だって朝練の時は私中心の練習だから、あいつはいつもどこか余裕で。
時に皮肉げで、からかってきたりして。
でも、そうだよね。
あれだけのシュート力をつけようと思ったら、練習しなくちゃ身につくわけがない。
思い出すのは先輩達の最後の試合。
あの後、二人で約束した。
『来年、絶対叶えてみせる』
その夢を追いかけて、辻は人知れず練習を重ねていたんだ。
抱き枕を抱えながらなんだか落ち着かなくて、ゴロゴロと身体を揺らし続ける。
笑っている顔、ちょっとからかってくる顔、真剣にゴールを見つめる瞳。
何度か頭を振っても、思い浮かぶのは辻の顔。
試合中のボールを追う姿。相手のディフェンスをにらみつける表情。
そんなの今まで何度だって見てきたっていうのに。
それがなんで今、こんなにチラついて離れないのか。
「なんなのよー」
このよくわからないもどかしい気持ちに比例して、抱き枕を抱える力がギュッと強くなった。
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