45人が本棚に入れています
本棚に追加
ボールが弧を描いて、リングをかすめることもなく落下していった。
「集中してねーな。今日」
辻が呆れたように言う。言われても仕方がない。
だって今日は本当に調子が悪い。そしてその理由もわかってる。
なんだが落ち着かないんだ。
今までどうやって辻と話していたんだっけ?
妙にソワソワして、視線が合わせられなくて。
なんでこんなに意識しちゃってるの、私!
辻はため息をついて、人差し指で器用にボールを回す。
「ご、ごめん。今日なんか調子悪い」
「なんかあったか?」
なんかって……言えるわけないじゃん。
辻の事なんだか意識しています、なんて。
「な、なんもない!なんにもない!」
勢いよく横向いて、辻の顔を見ないようにする。
だって、妙にドキドキするもん。
「しょうがねぇなあ。今日はシュート練はやめるか」
残念だけどそれも仕方がない。こんな状態なのに付き合ってもらうのも悪いし。
「じゃ、じゃあ早いけど片付けようか」
いうが早いか、私はさっさとバッシュを脱ごうとした。
すると、辻が意外なことを口にした。
「んー。練習じゃなくて、ちょっとした勝負しねえ?」
最初のコメントを投稿しよう!