1on 1

9/12
前へ
/12ページ
次へ
 ボールが弧を描いて、リングをかすめることもなく落下していった。 「集中してねーな。今日」  辻が呆れたように言う。言われても仕方がない。  だって今日は本当に調子が悪い。そしてその理由もわかってる。  なんだが落ち着かないんだ。  今までどうやって辻と話していたんだっけ?  妙にソワソワして、視線が合わせられなくて。  なんでこんなに意識しちゃってるの、私!  辻はため息をついて、人差し指で器用にボールを回す。 「ご、ごめん。今日なんか調子悪い」 「なんかあったか?」  なんかって……言えるわけないじゃん。  辻の事なんだか意識しています、なんて。 「な、なんもない!なんにもない!」  勢いよく横向いて、辻の顔を見ないようにする。  だって、妙にドキドキするもん。 「しょうがねぇなあ。今日はシュート練はやめるか」  残念だけどそれも仕方がない。こんな状態なのに付き合ってもらうのも悪いし。 「じゃ、じゃあ早いけど片付けようか」  いうが早いか、私はさっさとバッシュを脱ごうとした。  すると、辻が意外なことを口にした。 「んー。練習じゃなくて、ちょっとした勝負しねえ?」
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

45人が本棚に入れています
本棚に追加