孤独に酔うだけ

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孤独に酔うだけ

 通知が鳴る。目を覆っていた手を力無く離せば、切れかかった電球の灯りで視界がチカチカ瞬いた。眉間に皺を寄せながら二度、三度とまばたきをして、SNSを見た。ダイレクトメールが来ていた。差出人の名前は『千羽鶴』。さっき、僕の言葉に救われたという旨の感想を送ってきた子だ。 『改めてDM失礼致します。私は1年前に逝去した魚もとい、紗奏の妹です。姉からやまびこさんの話をよく聞いていました。いろいろ話したいことがあるので、一度私と会っていただけませんか』 どういう縁の巡り合わせだろう、というのが最初の気持ちだった。千羽鶴さんは来年の春、大学を卒業する千鶴さんという女性。次に思ったことは、僕はどんな顔をして会えば正解なのだろうかというもの。ただ、その奥には確かに、会いたいという気持ちが存在している。汗で滑る指先で、画面をタップする。 『僕はきっと、千鶴さんの思うような良い人ではありません』 一言、そう前置きをした上で、千鶴さんに会うことを決意した。
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