秋風の音がきこえて

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 他人を知ろうとしなくなった僕にはできない行為だったから、彼らの高校生らしい転校生への好奇心は眩しかった。  四限が終わって、昼休みになった。僕は教室を出て、四階の空き教室に向かった。窓際に押しやられた机の大群の上に朝コンビニで買ったパンを置いて、その辺にある椅子を持ってきて座る。  窓の外を眺めながらパンの袋を開けた、そのとき。 「おお、落ち着くね、ここ」  何故か遠藤さんが空き教室にやってきた。 「なんでここ、分かったの」 「あー、覚悟はしてたんだけど、囲まれるのに疲れちゃって。探検がてら人気のないところ探してたらたまたま。ごめんね、邪魔して」 「邪魔ではないから、昼飯、食べよう。休み時間無くなる」  そう言って僕はパンを食べ始めた。少ししても、彼女は何も食べる気配がない。というか、入ってきたときから手ぶらじゃなかったか。 「もしかして、昼飯ないの」 「はは、そう。忘れちゃってさ。まあ、全然昼ご飯食べなくてもなんとかなるから」  遠藤さんは何でもないような声色と表情をつくった。 「これ、パン二個買ったから、よければ食べて。昼飯抜きの奴の隣で食うの、なんか嫌だわ」
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