秋風の音がきこえて

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 もっとマシな文句があったろうが。まあいいか。 「本条君から貰ってばかりだね、いいの?」 「いいよ、はい」 「ありがとう」  受け取った彼女はパンを食べ始めた。先に食べ終わった僕は頬杖をついて飛行機雲を眺めていた。それから会話はしなかった。  その時間は、あの時と同じで心地良かった。この時間がまたあってよかったと僕は思ってしまった。  嫌なのに、もう失うのは嫌なのに。消えてゆく飛行機雲に、またこの時間が訪れればいいと願ってしまった。
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