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なるべくマンションから離れるため、2人はとにかく走った。マンションが完全に見えなくなった時、2人は疲労のあまり道ばたに座り込んだ。
「なんとか逃げ切れたな」
「そうだね、こんなに走ったの、フルマラソンの時以来だね」
「フルマラソン?」
「......覚えてないの?2人で参加したじゃん」
一瞬息が止まった。それでも披露のあまり呼吸が浅い。苦しい。ひたすら苦しい。
「また私に噓をついたね、まー君」
「美紀は......?」
「逃げるなんて酷いよね」
このとき誠は、恐怖の先にある真っ黒な感情に触れたような気がした。このままだと殺される。
頭で考えるより先に、身体が反応した。誠はさやかの首を思い切り締めた。少しも手を弱めてはいけない。なによりこれ以上。さやかの言葉を聞きたくなかった。
「まー君、痛いよ」
「うわああああああああああ!!!!」
さやかの言葉をかき消すように、誠は叫んだ。力いっぱい声を出したあと、彼女の目は生気を失っていた。
肩で息をしながら、誠はさやかの顔をじっとみた。人を殺してしまった罪悪感よりも先に、彼女から解放された安心感のほうがずっとずっと大きかった。自首しよう。生きてさえいれば、またやり直せる。
誠はそのまま最寄りの交番へ向かった。
「人を殺してしまいました。自首したいです」
誠はそう警察官に告げた。警察官は特に驚いた様子もなく、こう言った
「その子は死んでないよ、まーくん」
「......は?」
「また会えたね、まー君♪」
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