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その後も美紀との交際は順調に続いた。いや、順調ではあるのだが、やはり違和感は依然として誠の頭の中に残り続けていた。
例えば服装。交際前、美紀はカジュアルな服を好んで着ていた。しかし今ではガーリー系の服ばかりを好んで着るようになった。もちろん自分との交際を期に、系統を変えただけかもしれない。
しかし誠は自分から、美紀にガーリー系の服が好きだと言ったことは一度もなかった。そこがどうしても気がかりだった。言ったのは元カノだけだ。
他にも好きなバラエティ番組、ユーチューバー、本や映画、車の車種なんかも、美紀は完全に把握していた。彼女とは長い付き合いだし、誠が気付いていないだけで、どこかのタイミングで話していたのかもしれない。
そうだとしてもやはり、その本や映画の好きなシーン。ユーチューバーを好きになったきっかけ。バラエティ番組の神回など、細かく話した記憶は全くなかった。
誠の美紀に対する違和感は日ごとに増していった。美紀と一緒にいるはずなのに、その背後にはどうしても、別の女性を連想してしまう。
限界を感じた。美紀とはちゃんと話し合う必要がある。はやる気持を抑えきれず、誠は美紀の家へ向かった。彼女が住むマンションまで到着し、インターホンを押す。
彼女からの返事はなかった。時刻は夜11時。こんな時間に外にいるのか。t試しにドアノブを回してみると、ドアが開いた。いけないとわかっていながらも、誠はそのまま美紀の家の中へ入っていった。
家の中は暗く、人の気配はなかった。
「美紀、いるか?」
美紀からの返事はない。誠は玄関で靴を脱ぎ、まっすぐリビングへと向かった。そしてリビングの電気のスイッチを押したとき、誰かが席に座っている姿を確認した。黒のセミロングに人形のような白い肌。間違いない。その姿は、さやか本人だった。
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