お憑き愛

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「別れよう。お前とはもう無理だ」  誠は吐き捨てるように、さやかにそう告げた。時刻は深夜2時。二人が同居するマンションのリビングで、夕飯を食べている最中だった。 「なんで、噓でしょ?ねぇ噓よねぇ!?」  さやかはとびかかる勢いで誠に近づき、彼の肩を揺さぶった。  しかし誠は一切動揺をみせず、彼女の腕を掴みこう言い放った。 「もう疲れたんだ。毎日毎日、1時間おきに連絡よこすなんて、普通じゃないだろ」 「なんで、なんでそんなこと言うの!? まー君が私に心配させるようなことするからじゃん」 「だから何度も言ってるけど、美紀はただの会社の同僚で、それ以上でも以下でもないんだ」 「ほらやっぱり!一言もあの女の話しだなんて言ってないのに。自分から話すってことは、やっぱり何かあるんでしょ!?」  とりつく島もないさやかの態度に、誠は溜息をつき、天井を見上げた。 「とにかく、もう別れよう。さやかの愛は俺には重すぎる」 「嫌だ!絶対嫌だ!!!まー君、付き合うときに言ってくれたじゃん!ずっと、どんなときもお前の側にいるって!」 「......あの頃の気持は、もうない」  そういって誠はうなだれた。 「......私、あきらめないから」  空気が変わった。誠はなんとなくそんな気がした。 「さやか、あのな......」 「どんな時も離れない。誠からいったんだよ?それに私は応じた。この意味、わかってるよね?」 「深い意味はないだろ、ただあのときはそれがきっかけで、お前との交際が始まっただけだ」 「違うよ」 「え?」 「違うよ、全然違う。誠、やっぱりわかってなかったんだ。これは契約なの。契約は交わされた時点で、後戻りはできない」  誠はいつもと明らかに違うさやかの雰囲気に、身のすくむのような感じがした。別れたことによる悲しみや、怒りの感情とは違う、何か別の違和感がある。 「とにかく、もう決めたことだから。」  そう言って誠は早々と玄関に向かった。急いで靴を履く誠の背中をみて、さやかは一言こういった。 「これからもずっと、一緒だからね」  その言葉に妙な寒々しさを感じた誠は、急いでさやかの家を出た。靴はまだきちんと履けていなかったが、それでも早足でその場をあとにした。とにかく、一刻も早くこの場から離れたかった。
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