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Window
【名詞】窓,(パソコンなどの)ウィンドウ,
一瞬の時間
〔青〕
窓を開ける。
風は最早夜の色に染まっており,僕の心をただ虚しくしただけだった。僕は窓を開けることに何を期待していたのだろう。残ったのは後味の悪さだけだった。
他の2人を起こさないように,そっと動く。なぜ,僕たちはこんな目に遭わなければならないのか。段々と腹の内側で何か熱いものが溜まり,息苦しくなる感覚がする。最近よく起こるのだ。苦しくて,つらい。
急に,げっそりと痩せた旧友を思い出す。途端に寂しくなり,悲しみが頬を伝った。彼女を救う方法は自分にはなかった。それが逆に,彼女の死という事実を自分にとって重いものにしていた。
なぜ人は死ななければならないのか。考えたところで,「増えすぎると困るから」という正論が突きつけられ,さらに悲しくなるだけだ。自分にできたこと,やりたかったことは彼女を救えない。
何を考えても今は感傷に浸ってしまう。だめだ。そろそろ寝よう。窓から吹く風が鬱陶しくて,閉めようと手を伸ばす。反対側の手で,最後の雫を拭った。
窓の奥には,歩く男がいた。身長から察するに,同年代かもしれない。誰かと話している様子が窺える。しかし,映るのは1人だった。
白昼夢でも見ているのかもしれない。ただ,今は夜だ。
窓を閉めようとしたところで,隣で寝ていた蒼威が起き上がる。
〔蒼〕
苦労して調べた番号で回す。"かちゃ“とも"きゃちゃ”ともつかない音が鳴り,小さな振動が僕に快感を与える。この金庫は数ヶ月前に亡くなった碧生のものだ。
彼は,事故で亡くなった。直接血が繋がっていたわけではないが,同じ恐怖に立ち向かっていたという共通点があった。仲間の喪失は心の支えを無くしたのと同じであった。
この金庫のことはあいつには隠している。そして,亡くなった姉の事を思い出し,手に籠る力が強くなった。そこで,解錠音が聞こえたのだろうか。こちらの心など知らず,葵が近寄って来る。
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