櫻谷姫乃さんとお掃除ロボット

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 その日の夕方。 「茜、なんで翔にあんなこと言ったのよ?」  部活から帰ってきたばかりの中学生の娘、茜。まどかは仁王立ちで玄関口で問いかける。茜は家に上がれず不満気な様子。ドンっと部活バッグをまどかの足元に置く。 「……何? あんなことって」  まどかは荒々しげにまくしたてた。 「翔がお掃除ロボットにアイちゃんって名前をつけて、わざわざ紙をちぎってお掃除ロボットに吸わせて食事させてるみたいなの。可愛いいなんて言ってペット扱いしてるんだから」  茜は合点がいったのか、 「あぁ、そのことね。翔の友達が犬猫を飼い始めたって言っててさ。だから、翔も欲しくなったみたいなんだよね。でも、ほら、ウチは、お父さんがアレルギー持ちだから……」  夫の尚人は犬猫に強いアレルギー反応を示す…… と言っても病気ではなく、ただただ苦手意識が強いだけのようだ。ぬいぐるみなら大丈夫だが本物は駄目らしい。  過去、よちよち歩きの茜が、散歩途中の犬に近寄ろうとしたら尚人が急に悲鳴をあげ、 「茜、危ない!離れるんだ」と大きな声を出した。その声でびっくりした茜は泣き出してしまったのだけど。公園で出会った猫の時もそうだった。それでも、犬猫好きの茜は小学生の時、友達の家に産まれた子猫や子犬と遊ぶことが楽しくて貰いたがったが、父親に猛反対され、飼うことを泣く泣く諦めた経緯がある。  まどかは尚人にちゃんと聞いていなかったのだけど、過去に犬に噛まれたとか猫に引っ掻かれたことでもあったのかしら…… 「それで、姫乃さんがね、お掃除ロボットくれた時、ペットみたいになるよって教えてくれたの」  はっ?! また、櫻谷姫乃……? まどかは、あること(「櫻谷姫乃さんはお騒がせ」参照)があってから櫻谷姫乃が天敵である。
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