あかつき

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そいつが来て3年目を迎えたある日 それは意外過ぎる命令だった。 同盟国のある国で内紛が起こっている。その国から救援要請が来ているとのことで、出陣命令が下った。 その部隊を実質的に率いる者を、そいつにするとのことだった。 あり得ない 実質的にだとしても、なんの地位もない者にそんな事はさせない。 まして、ほとんど実戦経験のない3年目の兵士に任せるなど、考えられないことだ。 そもそも同盟国と言っても、今までほとんど交流をしてこなかった、いや、断られてきた国だ。内紛の真っ只中救援に向かう程の恩義などない。 何かしらの策略 そうとしか考えられない 事実上率いることになっている者は、地位と名誉を振りかざす鏡のような奴だ。 あいつの才能がこれ以上開花する前にどうにかしようというのか… ……自分に何が出来る? 命令が下ったということは、すでに国王始め、お偉方の同意を貰っているということだ。 くそっ!何故途中で気が付かなかった! 命令が下る前になら、あるいは…… 今更何を思っても何も変わりはしない。 緑と茶が広がる場所へと向かう。 相変わらず男が1人剣を振っている。 こっちに気付き駆け寄って来る。 「アーロン!今日も相手してくれよ!」 任務についてはもう聞いているはずだ。 何故こいつはいつもと変わりないのか。 「アーロン?」 動かずにいると、そう言って隣に座る。 少しの間こちらを伺い、 「例の話を聞いたんだね?だからって、なんでアーロンがそんな顔するのさ!」 笑いながらそう話す。 「…俺は、それなりに力のある立場だ。早くに気付いていれば、どうにか出来たはずだ…。」 俯いたままそう言うと、 「そう出来なかったってことは、そこに何か意味があるんだよ!僕が今回選ばれたことにも何か意味がある」 そう話すそいつの瞳は、いつもよりも赤みが増しているようだった。 「…意味?お前を見す見す死にに行かせることに意味があると?」 そうやって睨んでやると、そいつは優しく微笑んで、 「アーロンは僕が見す見す死ぬと思ってるの?」 そう言ってきた。 「…お前はわかってない!こんな命令馬鹿げている!だいたい本当にその国で内紛が起きてるのかどうかすら疑わし…っ」 珍しく感情的になったせいで、ここが城の敷地内だということを忘れていた。滅多に人の来ない場所とはいえ、何処で誰が聞いているかわからない。 一呼吸置いて、そいつの隣に腰を下ろす。 「うん。危険ではあるよね?でも、兵士ってそんなもんなんでしょ?よく事情がわからなくても命令が下ればそれに従って命をかけて闘う」 「ああ、そうだ。だが、今回の任務が今のお前にとって、ふさわしいタイミング、ふさわしい内容だとは思わない」 能力は、然るべき時に然るべき場所で発揮するべきだろう。 「どんな経緯があったのか、どんな意図があるのか僕にはわからないけど…。でもさ、それでもそこには何か意味があると思うんだ」 「…はぁ。何故そんなに前向きに考えられるんだ」 こいつは地位や名誉の外に居たから知らないのだ。そんな物の為に簡単に命が消されてしまうことを…。 「…あのね。僕、本当に貧乏だったんだ。」 ? まるで答えにそぐわない答えが返ってきた。
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