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結局あいつは命令通り任務に赴いた
それから1年
内紛は収まったようだ。だが、任務に赴いた者達の消息は、詳しくは伝えられなかった。
そもそも、この城の中の、国王直轄の兵士など、ほとんど収集されていないのだから、情報が少なくても仕方ないと思える状況が始めから出来ていた。
更に1年
あいつは帰って来なかった
唯一の自分の身内である母親が亡くなった
この白い箱から出よう
そう思った
あいつのような才能がある訳でもなく、情熱がある訳でもなく、決まった訓練をして、着飾った衣服に勲章を付け、重厚な扉を開いては、今を維持する為の司令を受け取り伝える。
この毎日に、あいつも居ないのに、最早意味を見出だすことは出来ない。
沢山の勲章の付いた上着を置き、城を出た。
「お~い~ちゃんと真っ直ぐ歩け~」
いつもの如く朝まで酔いつぶれた奴が、自分の足元の不安定さを他所に、人に掴まりながら文句を言ってくる。
文句を言いたいのはこっちだが、それが何の解決にもならないことを理解している。
「おい!アーロン!宿はまだか?すぐそこだったはずだぞ!?おんぶしろ!お姫様抱っこさせてやってもいいぞ?…うぷっ」
あり得ない
だが、こんな時間にこんな酔っぱらいの介抱をしている自分が1番あり得ない
身長差があるから肩を貸すわけにもいかず、仕方なく背負ってやる。
すっかり力を抜いたそいつの、緑と金が混じったような色の髪が頬の横に垂れてくる。
まったく…こいつと居ると何かを考え続けるということが出来ない。
見晴らしのいい場所にある店から出ると、遠くに水平線が見え、まさに今照らし始めようとしている太陽のせいで映った色が、遠い昔の記憶を甦らせた。
そんなこと一切知る由もないこいつは、現実に引き戻し、この俺に背負われているのだ。
背中でむにゃむにゃと何か言っている。
「う~ん…お?ほぉ~綺麗だなぁ。う~んと…え~っと?…何て言うんだっけ?」
突然背中で目覚めたと思ったら、急に訳のわからないことを話し始める。寝惚けてんのか?
宿はすぐそこだ。
気にせず無視していると、
「あ~!ここまで来てんだけどな~!何だったかな~!」
どうやら寝惚けてるわけではなさそうだ。そんなに話せるのなら、自分で歩けるはずだ。
「おい!起きたのなら自分で…」
「思い出した!あかつき!」
?!
…今…こいつは何て言った?
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