あかつき

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「…何だと?」 「あかつきだよ!あかつき!この日が昇る時の綺麗な色!あ~すっきりした!」 そうだ、そうだと納得して、また人の背に体重を預けようとしている。 「お前、何処でその言葉を知った?」 「ふぇ?」 すでに勝手に夢の世界へ戻ろうとしてた奴を引きずり戻す。 「…何処って…何処だったかなぁ……」 寝息が聞こえてくる こいつ! 「おい!振り落とすぞ!」 「!?わ~かった!わかった!…え~と?う~ん?…え~…あっ!お前と出会う少し前かなぁ…何処だったかは覚えてないけど…あの色の瞳をした男の子が…そうだそうだ!泣いてたんだ」 「…男…の子?子供なのか?」 「ああ、まだほんの小さな子供だ。見付けたからにはしょうがないから、一緒に来てたはずの父親を探すことになって…。その時にその子が教えてくれたんだ。変わった瞳の色してんな?って言ったら、すっごく嬉しそうに、父親と同じ色で、夕陽に似たような朝焼けのその色は、父親の名前になってて、あかつきって言うんだって」 「………」 まさか…信じられない けれども、あんな瞳の色をした、同じ名前の奴が居るだろうか? 「あ~なんだったかなぁ…なんか意味がどうのって自慢してたな…ん~と……ああ…賢いとか、望んだことが叶うとかって…自分の名前のように…自慢…して…たな………」 「お前…その父親に会ったのか?」 「…んぁ?会ったけど?言ってた通りの同じ瞳の色で、すごく礼を言われたな…。あ?そう言えば、お前が付けてるのとよく似た紋章のペンダントを付けてたな……。うん、そうだそうだ。格好いいなぁと思ったの…思い…出…した…」 あいつだ 生きてた しかも同じ色の瞳を自慢する息子までいるだと? 「ふっ。そうか」 限界を迎えた背中の奴はすでに全体量を預けている。 今も身に付けているペンダントは、国王直属の兵士と任命された者に贈与される、神聖な力が込められた物だ。ロザリオの意味合いを持ち、剣を扱う限り皆肌身離さず持っていた。全ての勲章は置いて来たが、これだけは持って来た。 意味…か… 何があったのかはわからないが、 もしも、あいつがあの時任務に赴かなければ、あのままあの世界にいたら、その息子に出会える未来はなかっただろう もしも、俺が城を去り、こいつと旅をしなければ… 俺がこの面倒な奴からさっさと離れていれば… あいつがあの瞳の色をしていなければ… こうしてあいつのその後を知る事はなかっただろう… 「ふっ」 清々しい程に迷いのない瞳を思い出す 『何か意味がある。それが普通じゃないなら尚更だ!』 何となく、仕方がなく、目的もなく選んで歩んできた道が、あいつに繋がっていた。 俺が選んできた1つ1つの選択の先が、あいつに繋がっていた。 まるで、人生をかけて俺にそれを証明したかのようだ。 背中の奴は、もう夢の中だ 俺の考え等知る由もないし、知る気もないだろう これもこいつの、強運或いは引き寄せの力なのか? 「はぁ」 しょうがない こいつから離れる手筈はまた明日考えるとしよう 目覚めた途端にまた振り回されるであろう旅に備えて、今は宿に辿り着く事だけを考える ほんの短い曉の時が終わる前に…
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