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「失礼いたします」
綺麗に装飾された分厚い扉を閉める。
カッ カッ
廊下を歩けば綻びなどないと主張するような綺麗な反響音
両側には当時の技術を注ぎ込んだ柱が一定の感覚で立っている
幾つかの角を曲がる
変わるのは外の景色だけ
永遠に続くような富と名誉の象徴の景色
城の中から出て少し離れた場所へ向かう
ようやく白い世界から解放され、緑と茶が広がる世界へと出る
男が1人剣を振っている
と、気付いて息を切らしながらこちらへ駆け寄って来る
「アーロン!ちょっと相手してくれよ!」
お決まりの台詞だ
邪魔な上着を脱ぎ剣を抜く
先程まで鍛錬していた男が徐々に呼吸を整えていく
深くゆっくりと
何も聞こえない世界に入った時、動いた
一瞬で目の前へと近づくと、的確な動きで剣を振るう
冷静な分析だけでは、この経験値でこんな動きは出来ない
おそらく天性の才能だろう
が、
キーン!
倒れた男の鼻先で剣を止める
「………くっそ~~!!」
そう言って小さな子供のように両手脚を広げて悔しがっている
「すっげぇ考えたのになぁ!やっぱアーロンはすげぇな!」
そう言って笑っている
「お前とは与えられてきた物が違う。むしろ何も与えられてこなかった者がこれだけ出来る方が凄い事だろう」
そう言うと
「ははっ!やっぱりアーロンは変わってんな!そんな嫌味なく自分が恵まれてるって認めて言い放つ奴いないぜ!」
そう言って笑っている
「事実だ。もう陽が落ちるぞ」
空は赤と黄色が黒と混ざったような色で、どんどんと下に追いやられている
「ああ!今日はもう終わりにする!」
沈みそうな陽の色に少し似たような色の瞳を輝かせながら起き上がる
生まれた環境によるその後の人生への影響は大きい
剣の腕が一人前になる頃に名誉と共に消えた父親のおかげで、生まれた時から地位もそれを受け継げる為の教育も与えられた
これだけ揃えられて、地位も名誉も手に入れられない奴などいないだろう
周りに居る者達も大概同じだ
父親の、或いは義理の父親の、或いは様々な地位や名誉のある者ゆかりの者達が、同じ地位を守っていく
その均衡が崩れる事は不安を生み出し、崩す者は煙たがれる
ただ同じように続いていくこと
それが誰もが望んでいることであり、それを維持する事が重要だ
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