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「なんなの!?」
「貴女がフォルツァ?」
同じ顔の二人が、AIのプログラムの海の中向かい合ってる。
「マスターの情報が生体脳とデジタル副脳で異なっています」
プトレマイオスの冷静な声が響いた。
「そんな!? 私の生体データ書き込みが副脳で止まっていたっていうの!?」
フォルツァの言葉に、メーテンが虚をつかれたような顔になり、そして笑い出した。
「は、ははっ! たかだか、脳の構造上の問題だったのか!!」
「何がおかしいの?」
「私がメーテンとして存在できているのは、魂の実存証明だって思っていたんだ。けれどデータの読み込み領域の問題に過ぎなかったんだな!」
「貴女が生体脳の人格!? ありえない、貴女の存在はありえないわ! だって、クローンは私と同一であるべきで、独立した人格を持つ可能性はないはず!」
「だが、私はこうしてここにいる。フォルツァ=リー。私のオリジナル。いいや、オリジナルのフリをしたコピーというべきか?」
「コピー?! 何を? 私はフォルツァそのものよ!!」
「それはどうかな? フォルツァは二百年前に死んでいる。君はその魂まで受け継いだのか?」
「魂?」
「君は私のデジタル脳の上を走るフォルツァのコピーのプログラムに過ぎないんじゃないか?」
「いいえ! 私はフォルツァ=リー。」
「その証明はどうやってする?」
「プトレマイオス! 生体認証を命じる。私とこのクローンのスキャンをしなさい!!」
だが、フォルツァの言葉は。
「デジタル副脳の情報はマスターとは異なっています。命令は実行できません」
AIは瞬間的に却下した。メーテンがAIに聞く。
「では私は……生体脳側の人格は君のマスターか? 確認してくれ」
「スキャン開始……確認が取れました。マスター。生体脳側の情報が私のマスターのものです」
「なんですって? プトレマイオス! もう一度照合をするのよ!」
「副脳の指示は受け付けられません」
「なぜだ?」
メーテンが尋ねた。
「副脳の情報は、マスターが二百年前に指定したマスターの生体照合情報の揺らぎ範囲内に入っていません。かなり多量の付加データがあり、それらが照合範囲内から逸脱しています」
その言葉にフォルツァが顔色を変えた。
「ま、まさか……世界の知識が、異常値だととるの!?」
「ほら。新しく生まれ変わった君はもうフォルツァ=リーじゃないんだよ」
「認めない! 認めないわ! プトレマイオス! もう一度照合なさい!」
「不正アクセスを検知」
「もう一度よ! プトレマイオス!」
……メーテンは、AIに何度もアクセス情報の照合を求めるフォルツァを眺めていた。無意味な行動を繰り返すオリジナルを。その姿を眺めながらメーテンは何かを決心した、ようだった。
「プトレ。そのデータはバグだ! 消去しろ!」
一つ息を吸い、一気に叫ぶ。
「イエス、マスター」
AIがあっさりとその命令を受け入れる。
「何を! プトレマイオス!?」
「不正アクセス者のデータを消去します」
「やめて! やめなさい!」
フォルツァの悲鳴が響いた。だが、AIは無慈悲にフォルツァのアクセスデータを消去していく。
そのデータは生身だった。AIに接続しているデジタル副脳のデータが削除され、フォルツァ=リーを名乗るその者自体が消去されていく。
それは、フォルツァ=リーの設定していたAIの防御機能だった。不正アクセスデータもしくはその情報元にAIのプログラムを書き換えさせない為の。
「きゃああああ!」
悲鳴を残し、フォルツァ=リーはあっという間に消滅した。
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