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戦場の再会
兵士たちは、それぞれ定められた位置に立った。背筋をピンと伸ばし、凜とした表情で。
先頭に立つ兵団の団長が、指揮を取ろうと後ろを振り返ったときだった。
「な、なんと!」思わず声をあげた。「お前たち……」
そこには思い入れ深い顔ぶれが並んでいた。
「何万人といる兵士のなかで組成された今回の兵団。偶然にもこうして、我らが再び一同に会するなんて……。これを奇跡の再会と呼ばずして何と呼ぶ!」
咆哮した刹那、団長は感傷に浸った。もちろん、呑気なノスタルジーを戦況は許してくれない。敵が容赦なく砲撃を仕掛けてくるからだ。それでも、愛おしさを感じずにはいられなかった。
「俺たちも驚いてますよ、団長!」
「また、この十人で戦えるなんて!」
以前、激戦を共にした同士たち。その結束は強かった。しかし、当時の戦いでは、無惨にも敗れ去ってしまった。兵は次々に倒され、布陣は無惨にも離散。二度と会うことはないと思っていた。
「今回こそは、俺が守る。どんな砲撃が来ようとも、この俺がお前たちを守ってやる」
団長は決意に体を震わせた。その後ろ姿を見て、あとに続く兵士たちも勇気を滾らせた。
「団長、何か秘策でも?」
「簡単なことさ。俺が倒れなきゃいいだけの話だ」
「団長だけには任せていられない! 俺たちだって、今回こそは誰ひとり倒れませんよ」
「頼もしいじゃないか。でもな、団長であるこの俺が不甲斐ないと、お前たちに迷惑をかけてしまう。お前たちの命を預かっている身分だからだ。もう一度言う。何があっても俺は倒れない。それが先頭に立つ者の務め。戦場の契りさ」
団員の命を守ると誓う団長の覇気に、一同は圧倒され、言葉を失った。
「さぁ、ヒューマンドラマはここまでだ。前を見ろ。敵は砲撃の準備に入ったぞ。いいか! 今回は我々の勝利だ! 何が起きようともこの場を離れるな! さぁ、命を捧げよ!」
兵団は雄叫びをあげながら、全身に力を漲らせた。
タケルは眼前に立つ標的を睨みつけた。
「よし」
気迫を言葉に乗せ、その一歩を踏み出した。
流麗なフォーム。しなる右腕。その手から、砲撃は放たれた。
背後から友人たちの声が飛ぶ。
「おっ、完璧じゃね!」
「さすがタケル!」
15ポンドのボールが凄まじい勢いで地を這っていく。
「決まった」タケルは叫んだ。
ボールは先頭のピン目がけて襲いかかる。
「えっ?!」
鈍い音が響き渡った。タケルが放った渾身の一球を、先頭ピンが跳ね返したのだ。
「おいおい、ふざけるなよ!」
「なんだ今の? どう考えてもストライクのコースだったじゃん! これが決まってりゃ、パーフェクトゲームだったのに……」
友人たちのヤジが飛ぶ。
凜と立ち並ぶピンを呆然と眺めながら、タケルは頭を掻きむしった。
「なんかウチのレーン、おかしいんですけど」
背後のカウンターで待機するスタッフに、友人のひとりが声をかけた。
事情を聞いたスタッフは、ズラリと並ぶ十本のピンを認めると、小走りでピンデッキへと向かった。そして、クレームの対象となっている先頭ピンを足で小突いてみた。
「あれ?」
そのピンは屈強な根を張ったようにビクともしなかった。何度か足蹴にしてみるも、倒れる素振りを見せない。試しに他のピンも小突いてみたが、どのピンも倒れるどころか、微動だにすらしなかった。
スタッフはボウラーズベンチを振り返ると、両手で大きくバツを作ってみせた。
それを見たタケルたちは舌打ち。スタッフに促されるまま、隣のレーンへと移動する。
元いたレーンのスコアモニタには、大きく〈故障中〉の文字が表示されていた。
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