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お洒落な黒のジャケットに、上と同じ色のスカート。胸元には赤いリボン、鏡に映るのは……私? この服は、星宮高等学校⁉ ということは、高校生⁉
「ちょっと、璃々花ー⁉ そろそろ、行かないとでしょう? 降りてらっしゃいな」
「あー、ちょっと待って‼ 今行くから~」
化粧台の椅子に座った女子高生と、母親の会話。
え? どういうこと? 前に、高校生の私がいる。じゃあ、私は? ここにいる。なのに前にもいる。
―――もしかして、客観者として私は今、ここに存在してるの⁉
「あー、高校生かあ。どんな子がいるかなぁ」
「良い子ばかりですよ、きっと。名門校なんですから」
「そうかな?」
住宅街を歩く、私とママ……。
さっき、部屋に居たはずなのにどうして外に⁉ いつの間に、外へ出たの⁉
あ、まただ。この意識が遠のいていく感じ、さっきと同じだ。また、場面が変わる―――
「うわあ、かっこ良いね‼ 名前なんていうの⁉ 私と帰らない⁉」
目の前のは、琴葉の好きな人……?
「ねえ、私さ好きになっちゃった。友都君のこと」
友都っ―――
「いい加減にしてよっ‼ 好きな人を取るなんて、最低っ‼」
「何よ? 文句でもあるの? ただ、あなたより前に告白して付き合っただけよ?」
泣き叫ぶ琴葉―――
「二度と、話しかけてこないで」
前の琴葉とは違う。髪も染めて、ピアスもして。
「ねえ、璃々花? 何でさ、友都を奪ったの? ねえ、答えて――?」
やめて、やめてっ‼ 来ないでっ‼
「璃々花、忘れないから絶対に。必ず、後悔させる」
お願いだから、やめてっ――‼
こっちに来ないでっ‼ お願いだからっ――‼
「ゆ……め……?」
カーテンの隙間から溢れる光で目が覚めた。
なんだ、夢か。久しぶりに、こんなに怖い夢を見た。思い出さなくてもいいことばかり、思い出して最悪。せっかくの休日が台無しじゃないの。
少し、イライラしつつ私はベットから立ち上がった。
「璃々花」
ソファには彼がいる。
「友都っ!」
「どうしたの? 朝から。怖い夢でも見たの?」
彼の腕の中。安心する。
「うん、過去の夢を見たの。すっごく、すっごく怖かったわ……」
「そうか。大丈夫だよ、俺がいるから」
「友都……」
やっぱり、友都は私のことが好き。
琴葉なんかじゃない、この私。
あれは奪ったなんかじゃない、ただ運命の糸に逆らえなかっただけ。
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