第6話 遺構崇拝者と、立てこもりと、精鋭部隊

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 果たして、ヴィルヘルミーナの展示会を占拠した遺構崇拝者たちの集団は、エックハルト様率いるランデフェルトの精鋭部隊員によって無事排除された。その解決直後の話から始めたい。 「ご苦労様でした」  それが彼の労いの言葉だった。 「…………」  俺は脱力して、ソファに座り込む。  エックハルト様は最近の遺構崇拝者の不穏な動きについて察知しており、公爵の了解のもと内偵活動を行っていた。その甲斐あって自分を彼らの仲間と信じ込ませることに成功していて、今回仲間のような顔をして占拠された会場に入り込み、配下の兵士たちと共に俺たちを救出することができた。  ランデフェルトの精鋭部隊員は身軽さを旨としていて、都市戦闘に長けているため、こうした任務には最適とのことだ。だけど、俺たちに危険が及ぶことを避けるために、しばらくは白服の仲間のふりを続けていたので、俺としてはその間冷や冷やしていた。 「……どうして、教えてくれなかったんですか」  やっと口から出てきた俺の言葉だ。 「聞かれませんでしたからね。敵を欺くにはまず味方から、とも言いますし」  しれっとエックハルト様は答えて、それから続ける。 「数ヶ月の内偵活動が水の泡ですが……ヴィルヘルミーナ様の身の安全と事業の成功より優先されることなど、何もないですから」  俺はこの時理解した。この男、アリーシャの言う通り、確かに性格が悪い、ある意味では。 「……ヴィルヘルミーナは?」  俺と同じく救出されたヴィルヘルミーナだが、その後は別の部屋に通されて、それ以来顔を見ていない。 「ご家族と。リンスブルック侯爵殿下もお喜びでした」  そうだった。即位式に合わせて、大公国にヴィルヘルミーナの父親、リンスブルック侯爵殿下も訪れているはずだった。会うのは展示会を成功させてからとヴィルヘルミーナは息巻いていたので、まだ再会とは相成っていなかったのだ。 「……これで、全部うまくいくといいな」  俺は、ぼそっと呟いた。
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