第3話 開店と、ガラス窓と、石ころ

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 まあ、その後もいろいろあった。ガラス板の生産だって、そうそう楽だったわけじゃないし。その後しばらくかかったが、アリーシャの言った通りのお店が、無事開店できる運びになったのだ。  とにかくなんだかんだあって、開店の日の話だ。その日はちょっとしたお祭り騒ぎになった。  店の正面玄関の入り口は高くなっていて、結構広いテラスが設けられている。膝ぐらいの高さの半円形のテラスが建物の正面を取り囲んでいて、階段で登る形だ。側面にはもう少し小さな扉があり、1階の店内に入れる仕組みになっている。2階と3階は外の階段を上がって入る形だ。  そのちょっとした舞台のようなテラス上で、ヴィルヘルミーナはご満悦だった。その周りには街の人々が詰めかけ、ごった返している。いろんな服装の人々がいたが、あまり貧しそうな人はおらず、中には良い仕立ての服を着ている者もいる。その点でアリーシャの目論見は、多少は成功しているようだ。  宮廷から借りてきた、見栄えのいい二人の男性が、今にもショーウィンドウの扉を開こうとしている。俺は、テラスの脇からその様子を見守っていた。  天気はじっとりした曇りの日だった。  過去にもこんな曇りの日があったことを、なんとなく俺は思い返している。 (……何もなければいいが)  なぜか俺は、そんな風に考えていた。  ショーウィンドウの扉が開く。  中には、赤と黄色の、豪奢なドレス。  それを覗き込もうとする、人、人、人。  視界に飛び込む、小さな黒い影。  それは、拳大ほどの大きさの石ころだった。  俺のガラス板に、それは直撃する。  その一撃で、ショーウィンドウに罅が入り、店内にガラス片が飛び散る。  続いて上がった悲鳴を、俺はまるで他人事のように、ぼんやりと聞いていた。
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