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「それなら、あんたが下山するまで俺が伴をしよう。またあんなふうに転げ落ちても次はすぐに助けが現れるとも限らないだろう」  嫌で無ければ。ロウの提案に、男はぱっと表情を明るく変える。 「それは心強い、是非頼むよ」  男は歩きながらゆっくりと、様々な話を語って聞かせてくれた。  今の季節ならばどこでどんなものが採れるかだとか、どこの村で作られている何という品が有名だとか。この国の伝統料理の話や、変わった植物や獣の話、国の中で昔あったという不思議な話など。ロウにとっては新鮮で興味深い話ばかりだった。しかも至極上手に語ってくれるものだからロウはつい話に引き込まれてしまい、相手の歩調に合わせていたのもあってか、山頂間際にあると聞いていた山小屋に辿り着いた頃には黄昏が過ぎていた。
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