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 男を助けた際に先に追い抜かれ、男の語る話に気を取られ知らぬ間にすれ違いでもしていたのか、それとも別の場所で野宿をしているのだろうか、他に居るはずの登山者の姿を確認することもなく、その日山小屋で夜を迎えたのはロウとその人物の二人きりだった。 「ありがたいことにその山小屋は雪解け水を引いていてな。そこで水を補給して、一晩過ごした。彼は鳥目だというから早々に休んで、日の出を待って出ようとしたんだが……」  朝になれば、辺りは一面薄く立ち込める霧、いやそれはもう雲と言う方が正しいだろう中にあった。ロウは静かに続く話を口にする。
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