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ロウはその情景を語り聞かせる相手へより鮮明に伝えようと、同じ言葉を特殊な声の中に溶かす。
聞いた相手の中に直接感情や情景を流し込む、幻竜が持つ歌い鳥の声。その声は、ロウが見た男の姿をセイとトキノの眼の内、頭の中へゆらりと映し出した。
「民と、臣下……」
その言い方に引っかかるものを感じたセイが鸚鵡返しに呟くと、ロウは薄らと笑みを浮かべてトキノを見た。
「これは、結果として俺もお前に言われたことになるんだろうか。――なあ、トキノ」
ロウが言葉を閉じる。その眼前で、トキノは少々どころか珍しく明らかな驚愕を露わにしていた。
含みを持つロウの声と、対して言葉を失っているトキノを交互に見やりながら、セイが首を傾げてどういうことかと問う。
「どういうことなんだろうね。確かにそんなことを父上に言った記憶はあるが」
トキノが、驚きに掠れる声で告げた。
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