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 山を下り、登山口の村まで辿り着けば、言われたように少し騒ぎになり始めていた。山に入ってから戻ってくるまでにはせいぜい二日、それを過ぎてもロウが山から下りて来ないので、探しに出るか、城塞に報告するか、という話になっていたのだとか。  ぎりぎりのところでそれは止める事ができたのだけれど、そこで初めて、ロウは明らかにあの男がこの世の者ではなかったのだと確信した。  そして、頭の中に記憶したこの国の、まだ浅い過去の中に思い当たる者を見つけた。  病弱故に在位は長く続かず、幼い姿のままの一人娘に後を託すしか無かった、心優しき先代の王。  名をシキハ。鳥の姿を強く現していた、鵺の一人。その墓所は広く知られることもなくミヤツネ山、飛べずの山の懐に設けられたという。本人たっての希望だったとロウが知ったのはそれから後の事であったが。   「そんなことって、あり得るのか?」  話を聞き終えて、想像が追いつかないのか耳を倒したセイが呟く。嘘偽りで無いとわかっていても、信じられるかどうかは別だ。そう言うように。 「父上なら、あり得る話かもしれないなあ。あのお方はあれで人の世話をやくのが好きなお方だったから……」  トキノは懐かしさともの悲しさ、そして少々の呆気を含んだ声で返す。 「結果として良い出会いだったと言ったのは、その通りだろ?」  また会うことは叶わず、望んでもならない出会いではあったのだろうけれど。  ロウは言って、満足げに息を吐いた。 ――終
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