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 街中の道のように整備されているとは言い辛いが、それでも道として成る緩やかな山道をただひたすらに歩いて登る。  聞いた話ではその日山に入っているのはロウを含めて八人いるという。降りていく三人とすれ違い、途中で二人追い抜いた。上に向かう真新しい足跡は先に登った者が付けた跡だろう。それを辿りながら進んで行った先、芽吹きだした木々の枝がぱっと開けて空が広がる場所に出た。山腹から尾根へ、道が変わった。 「そのとき風が強く吹いてな。晴れ間続きで地面が乾いてたんだろう、土埃が舞ったんだ」  視界が霞んだ。眼を閉じ口を閉じ、その一瞬を耐えた後だった。  道の下に何かが落ちた音が聞こえた。石だの枝だのではない。それなりに大きなもののようだなと感じてロウは身構え、視線を巡らせる。 「案の定、先を行っていた誰かが落ちたようだった。……まあ幸いなことに道から少し下にある大きな松の木に引っかかっていてくれたんだが」 「それが、その人?」  セイの問いに頷いた後、松の木に引っかかったその人物は弱々しく呼びかけてきたんだ、とロウは話を続けた。
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