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第1話 姉弟再び
「……それで話を終わりにしたわけ?」
「そうだが?」
それが、私たち姉弟の会話だった。
新帝国暦一一四〇年の初夏で、私が二十九、私の弟ヨハン、正式名称ヨハン・エードラー・フォン・ヴェーバーは二十八。もう二人とも、そんな年齢になってしまった。
ここはランデフェルト公宮の応接間の一つ。いつまで経っても登城しないヨハンに痺れを切らした私が直々に召喚した結果だった。ヨハンは渋々と言った感じで公宮に現れたが、若い頃とは違って、何も言わなくても大人の男性の正装をきちんと着こなしている。私としては、ようやくそういう格好が板についてきた、と言いたいところだけど。
一方の私は、貴婦人に相応しい、裾が広がって襟ぐりの開いた緑のドレス。私も一応公妃なので、公の場ではこういう衣装を着ないわけにもいかない。美しいドレスを着られるのは良いことだし、王侯貴族としてのおめかしに慣れてもきたのだけれども、楽な格好をしていられた若い頃が懐かしいと思わないこともない。
「ヨハン、あんたね。どれだけ意気地が無いわけ?」
「久々に会った弟に言うことがそれか」
「だってしょうがないでしょう。ヴィルヘルミーナ様の堂々としたご様子に引き換え、なんであんたはそんなに情けないの」
「何言ってんだお前! いい歳こいて色ボケか!」
「ヨハン今、いい歳とか言った?」
「あのな……だからな」
笑顔で詰め寄る私に、閉口気味のヨハン。
少し離れたところでは男性の召使が様子を窺っていたが、私の視線に気づくと視線を正面に戻し、何気ない風を繕った。
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