そよ風みたいに

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 初恋なんてそんなものだ、と思っているうちに結構ないい歳になった。と、言ってもまだ二十代だし、焦るほどでもないとは思っているのだが、周りはそうは思っていないらしい。  もちろん、彼女以外にもいいなと思える人はいた。だけど、付き合うには至っていない。それで、この歳まで来てしまった。  今、足を踏み入れたのは婚活パーティーの会場だ。  親に言われてしぶしぶ来ることになった。何度も言われて、今回初めて参加することになった。一度でも参加すれば、さすがに少しの間だけでも黙っていてくれるだろうとか、そういう期待からだ。  この会場にいることは結構な苦行だ。  ため息を吐きそうになって、息が止まった。  男ウケしそうな清楚な服に身を包んだ彼女が、いた。  こういう場所に慣れていないのか、きょろきょろと周りを見回している。  同じような状況なのかもしれない。  だけど彼女なら、こんなところに来なくても相手なんか大勢いると思うのに。だって、昔と変わらず、すごく可愛い。  声を掛けるべきだろうか。  だけど、こんな場所で?  きっと迷惑だ。  だというのに、 「あ」  こちらを見た彼女が、小さく声を上げてパッと顔を輝かす。小走りにこちらへやってくる。  それで、もうダメだった。 「久しぶり。こんなところで会えるなんて」  少し息を切らしながら、彼女は笑った。離れていた時間なんか感じさせないみたいに、自然に。  あの頃好きだった、彼女のままだった。
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