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「ねえ、本当にいいと思う人いなかった?」
彼女が首を傾げて聞いてくる。
ぐっと、言葉に詰まった。
「そっちこそ」
答えに詰まったときは、そのまま返すに限る。
彼女はちょっと困ったような顔になった。
「私、かぁ。そうだな……。番号、書けなかった人なら、いた」
「え?」
「書いても他の人が来ちゃうだけだし」
「どういうこと?」
彼女の言っていることがわからない。
「だって……、これ言っていいのかな。引かない? もう時効かな」
「?」
今度はこっちが首を傾げた。
「今、目の前にいる人ならいいなって思った」
「わ、私?」
「うん。でも、あれって男女でカップル成立する前提でしょ? その番号書いちゃったら同じ番号の男性が来ちゃうだけだから、それは困るし。私、男には興味ないんだ」
「え、ええと? じゃあ、なんでそんな男ウケしそうな服着て……。それに、男からモテそうなのに」
混乱する。
彼女は何を言っているのだろう。
「ああ、これ? お母さんが用意しちゃってたの。喧嘩になるのも面倒だから着てきたんだ。私の趣味じゃないよ。私が好きなのは……」
一旦言葉を切って、彼女が私を見た。
「高校生の頃、ずっと好きだったの。やっと言えた。言っちゃった」
彼女が何かをやり遂げた後のように、ほうっと息をつく。
彼女は私のことを真っ直ぐ見ている。
「……それは、もしかして、告白?」
「そう、だね。ごめん。気持ち悪い、よね?」
「ううん、違う」
私はぶんぶんと首を横に振る。
これは現実だろうか。
今日だってずっと彼女を見ていた。私だって、男になんか全然興味がない。
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