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「私、も、ずっとスキ、だった」
言わなくちゃと、思った言葉がカタコトになる。
「え、嘘」
「時効、かな……」
さっき彼女が言ったことを私も口に出す。
「ウソウソ! 時効じゃない!」
「でも、好きだった、って。過去形だよ」
「違うよ。今日、会場で再会できてすごく嬉しかった。周りなんか全く見えなくなって、早く終われって、そしたらまた話せるって、そればっかり考えてたよ」
「私も……。でも、まさか、本当に、私のこと好き、だったの?」
「うーん。それ、ちゃんと気付いたの高校卒業してからだいぶ経ってからなんだよね」
彼女は言った。
正直、私はまだ信じられない。
「だって、女同士でしょ? 思春期のって、自分で思春期とか言うのも恥ずかしいけど……、思春期の気の迷いだったかもとか思うよね」
「……」
それは私も同じだ。同性を好きになるのは思春期の気の迷い、とか言っている人はネットでもよくいる。疑似恋愛みたいなものだって。わたしもそれなんじゃないかって、悩んだこともある。
でも違う。ずっと忘れられなかった。
やっぱり、あれは恋だった。
私は彼女の言葉の続きを待つ。
「で、大学のときに男と付き合ってみたんだよ」
「え」
「ううん、大丈夫だから!」
彼女が慌てて顔の前で手をぶんぶんさせる。コーヒーがこぼれそうで危ない。
「そういうことする前に、ちゃんと別れたから! キスとかされそうになって、絶対違うと思って顔、押しのけちゃった。だから、なんにもしてないんだよ。むしろ、あの、高校生の時のデートの方がずっとよかったというか……」
「高校生の時のデート……。それって、私との?」
こくり、と彼女が頷く。
彼女もちゃんとデートだと思ってくれていたんだと思うと、自然と顔が綻んでしまう。そう思っていたのは、私だけじゃなかった。ただ友だちと遊びに出掛けていただけ、と言われればそれまでだから。
「でも、あの時は二人ともデートだってちゃんと口に出したことなかったでしょ? だから、今度こそちゃんと誘いたいなって思うんだけど、いいかな」
「ちょ、ちょっと待って、心の準備が……」
「じゃあ、準備ができたらいいんだね」
そう言って、彼女はそよ風みたいに笑った。
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