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 それから妹たちは、実家で後継者教育に励んでいるようだ。一度こっそりと抜け出したところ、家族にすら認知されなくなって大変なことになったらしい。  仮面を被って茶会や夜会に出たところで、からかいの対象となってしまう。だって印象に残るのは、聖具である異国の仮面のみなのだから。妹も元婚約者も今までずっとちやほやされてきたものだから、軽い扱いを受けることに耐えられなかったのだろう。  そして私と公爵さまはというと……。 「あんなに欲しがっていたでしょう」 「だから、忘れてって言ってるから!」  使用済みのシャツやら夜着やらを手渡され、私は吠えていた。本人に向かってあんな変態発言を垂れ流していたとか思い出したくない。いっそ殺せ。 「死ぬのなら、その命ごと僕が好きにしても構いませんよね?」 「公爵さまが私を殺しにきた」 「シーツでも下着でもお好きなものを差し上げたいところですが」 「ですが?」 「本体がいると言うのに、どうして代替品を与えて満足させねばならないのです」  公爵さまの唇が弧を描いた。そのまま強く抱きしめられる。 「随分とおあずけをくらいましたので、あなたの愛情に応えさせていただきますね」 「いや、無理、だめえええええ、今真っ昼間だから!」 「わかります。それは『嫌よ嫌よも好きのうち』ということですね」 「ああああああああ」  推しへの愛の重さには自信がありましたが、重たい愛を主食にする公爵さまには敵わないみたいです。
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