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「傷心旅行でも行こうかなー」
サッカー少年達が帰り、目立つようになった静寂を掻き消すように、わたしはわざと明るい声で言った。重い空気は好きじゃない。
「なにそれ?」
苦笑いをする正樹。
「いや、振られた人間の定番じゃん?」
傷心かどうかは別にしても、旅行をしたいと思っていたのは事実だ。
そう考えていた時、一つの考えが浮かんだ。”瑠香”の最後の思い出作り。
「正樹が決めてよ。私の行き先。彼氏としての最後の仕事」
正樹はまたまた苦笑いをした。
「俺、そういうの詳しくないし」
「なんだよ、つまんないなー」
わたしはわざとらしく嘆息する。そういえばいつもこの手の計画を練るのはわたしだったな。
「そういえばーー」
少ししてから聞こえた正樹の声にわたしは顔を上げる。
「妹が今度、旅行するって言ってたな」
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