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その選択肢は幸せ?
亡き夫の会社を引き継いで肩書きだけの社長を務めてる。世間にどう言われようと知ったことではないわ。営業努力をしなくても会社を何とか維持出来るくらいの収益はあるんだから。私は私の好きなことだけをして生きてきたし、これからもそれで生きて行くわ。
昭子の携帯から着信音が鳴る。
「はい、真田です。」
「真田さん。今大丈夫ですか?」
「はい!一条さん、大丈夫です!」
昭子の夫が病気で亡くなってからその心の穴を埋めてくれたのは天乃空の教祖一条伸行だった。昭子はその団体の支部のまとめ役的な立場になっていた。
「真田さん、今度の旅行ツアー行かれないんですか?まだ(人数)枠空いてますけど。」
「あ、え~っと、、い、行きます、はい。」
「そうですか。良かった。では当日楽しみにしていますね。」
「こちらこそ、お電話ありがとうございます!」
一条さんの教えを学んで十数年。一条さんが開催するイベントはだいたい参加してきたわ。そして支部のまとめ役的な立場にまで登り詰めて、こうして何かある度に一条さんから電話がかかってくる。
そりゃぁ、祈りの旅行ツアーは高額出費になるけどお金がなくても会社から社長名義で借り入れればいくらだってお金の都合はつくわ。
一条さんの行くところ、一条さんを追いかけていけば、いずれ私も幸せになれる。。
そう思うと昭子は幸せな気持ちになれるのだった。しかし、それと同時に心の内側にドロリとしたものが流れ込んでくる。それは数十年かけて少しずつ昭子の中に蓄積していた。
一条伸行さんの後を追うことが幸せのはずなに・・。
毎晩眠れない。眠った時は決まって夢を見てうなされる。
おかしい。何故だろう。誰か教えて欲しい。
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