例えばそんな、なんでもない再会

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「お前らって幼馴染なんだよな」 何気なく疑問を音にすると、小柄な善弥(ぜんや)が振り返りながら言った。 「そうだけどー?」 「……腐れ縁」 「えぇえ真咲(まさき)酷くない!?」 「……真実」 うるさい、と音にしなくても分かる表情で、オレの隣で真咲が呟いていた。 「それがなーに?」 「いや、オレこの祭りは来た事なかったんだけどお前らはあるんだよな、と思って?」 「ああ」 「あるよー! 昔はよく3人で」 「3人?」 「あっ!」 オレの疑問も遮って、大きな声と共に善弥(ぜんや)が駆けだした。 木の陰に隠れるようにしてこちらを見ていた人物に駆け寄っていく。 「知り合いか?」 「……ああ」 真咲に問いかけると、ほんの一瞬。 鋭い目をしたような気がしたが、静かに答えてくれた。 「ふぅん?」 「……さっきの、もう一人」 「え?」 歩いて近寄っていくと、善弥の良く通る声が少し遠くから聞こえた。 比較的小柄である善弥よりも、さらに背が低く、細い。 善弥から逃げようとしたのか木の周りをしばらく回っていたが、無邪気に追いかけまわして鉢合わせていた。 親しくてもでもその追いかけ方はどうかと思うぞ善弥。 「また会ったね!」 「……友達、なのか?」 「そう! 真咲も知ってるよね、よく遊んだ」 「ああ」 「お祭りの時一緒に!」 「あー……さっきの一人って『三人』の、か!」 「そう! 折角だから一緒に遊ぼうよ! ね?」 相手は困惑の表情を浮かべていたものの、善弥に組まれた腕を解こうとはしていなかった。 「オレは別に良いけど……」 「だってさ、一緒に行こ!」 善弥に確認されると、こくり、と頷いて一言も喋らない。 なるほど、恥ずかしがり屋さんか。 一人で勝手に納得して気を遣ってみる事にした。 「遊びにくいなら外そうか? オレはいつでも遊べるし」 そうすると、首をふるふると左右に振って、否定された。 「大丈夫だって。それに人数は多い方が楽しいし!」 「無理とかさせてないか?」 善弥への確認をしても、相手はもう一度首を振って大丈夫だと意志表示をしていた。 「大丈夫だって!」 「良いならいいけど……」 「遊ぶならさっさと行くぞ、夜になるからな」 「おっけーい! 折角だから色々行こう!」 珍しく真咲が動く気満々で、オレは目が点になった。 善弥と三人目のいつもの友達は先に……というか善弥に少し引っ張られるようにして行ってしまう。 ポカン、としているオレを置いていかないようにか、真咲はそこに残っていた。 「……なぁ真咲」 「どうした八尋(やひろ)」 「……何年ぶりに遊ぶ友達なんだ?」 「なんだ、分かってたのか」 楽しげにする善弥達を目を細めながら答える。 その後口の端を上げてフッ、と笑うと真咲はオレの方を見ていった。 「まだ小学校だったから15年ぐらいは経ってる、かな」 「オイオイ……大丈夫なのか、そのままにしておいて」 「駄目なら止めてるな」 肩をすくめる真咲を横目に、オレは脱力した。 「もう一個確認していいか?」 「ん?」 「本当はもう、『また』はないはずの友達だったりする?」 「……八尋はそういうの苦手じゃなかったか?」 「あー!!いいです、もう大丈夫です!! はい!!」 「それでいいと思う」 オレが怖がっているのを笑われているのを感じながら、歯を食いしばる。 誰もツッコミを入れないなら、多分大丈夫なんだろう。 「ああ、でもね、八尋」 「なんだよ」 「……善弥とお前と遊んでるとさ、『あいつも居たら楽しいかもな』とは思ったりはした」 「んじゃ楽しんでやろうじゃねぇか」 「俺、お前のそういうとこ好きだぜ?」 「そりゃどうも」 「足震えてるの面白すぎるし」 「うるっせぇぞ真咲……!!」 がくがくと震える足を何とかしようと太ももを叩く。 「おーい、なにしてんの、置いていっちゃうよー?」 「真咲がトイレ行きたいって言うから地図見てたんだよ、今行く!」 「オイ、俺そんなこと言ってないぞ」 やけくそになったオレが駆けだすと、真咲も後ろから走り出す。 多分この出会いは怖い話にも、良い話にも出来るんだろう。 それでも、オレ達はこれを日記に収まる日常にしていく。 こんな再開があってもいいじゃないか。
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