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『まもなく右方向です』  ウインカーの音を聞きながらハンドルを切る。  街の中心部を抜けて歩行者も減ってきた。ただこの辺りの道路は幅が広く交通量が多いため、スピードを出す車が多い。 「ああ、また抜かれた」 「ゆっくりでいいよ。焦るほうが危ないから」 「わかってるんだけど、後ろの車に抜かれるたび『こいつ何とろとろ走ってんだよ。前世はミドリガメか』とか思われてそうで申し訳なくて」 「その運転手はまずミドリガメに申し訳なさを感じたほうがいい」  カメにも優しい三菱くんは「初心者マーク貼ってるんだから大丈夫だよ。存分に甘えてこう」と私に声をかけてくれる。  矢印は順調に赤いルートをなぞっていた。  でもこれどこに向かってるんだろう。到着予定時刻も表示されないし。  もしかして悪戯だったりするのかな。これは単なるカーナビ業者の悪ふざけで、本気にしてる私が馬鹿なのかもしれない。  もしそうなら彼には本当に申し訳ないけど、でももうここまで付き合わせてしまったし行けるとこまで行くしかない。 「あれ、ここって」  助手席に座る三菱くんが声を出すのと同時、私も気が付いていた。  なんかこの道見覚えあるなあ、とさっきから思っていたのだ。 「うん、だよね」 「ほんと久しぶりだな」  何度も見てきた看板が目に入る。  実地教習のとき、この看板が見えるたび安心したものだ。 「僕たちの通ってた教習所だ」
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