1.千馬の王子様

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高身長でガッチリした体格に、光沢のある黒のストライプスーツを着こなし、シューズまでピッカピカの輝き。 カッコいい。 ツーブロックにアシンメのアップバングをバックに流した黒髪は、少しウェービーで上品な男らしさ。 イケてる。 そして大人の色気(オーラ)を発してるのに、清潔感があって爽やかさも(かも)し出している。 完成度高いっ! それにクリッとした二重の目元は優しそうで、なにより若そう!? 「七鳥小春(なとりこはる)さん!」 「は、は、は、は、は、はいっ!?」 一目で惚れ惚れさせられて、名指しされたら余計に緊張してガチガチになる。 完璧容姿(イケメン)は私の前まで歩み寄ると、抱えていた花束を私の胸元に捧げて、一段とにこやかに笑顔マシマシで首を下げた。 「誕生日おめでとうございます!」 「あ、ありがとう、ございます…」 おずおずと広げた私の両腕に、そっと花束が乗せられるとふわっと薔薇の香りがたち籠める。 途切れぎみだった呼吸の反動で、その甘く豊潤な匂いを大きなひと息で吸い込めば…… この夢のようなシチュエーションに、 深く心酔しそうになる。 だってこんなに近くで、こんなカッコイイ男、実写で見たことないっ! しかも!! 28の誕生日を祝って花をくれるとか!? 直視するのが困難でパチクリする私の前で、 完璧容姿はハニカムようにかわいげな笑顔を送り続ける。 イケすぎて目がヤられそう。 私の推しにも引けを取らない神々しさ!! ―――――で、 これ何のイベント??? まさかの… ドッキリ!? 誕生日ドッキリってやつ!? えー、もー、ヤダァ。 誰よ? こんなの仕掛けてきて〜。 じゃなきゃモデルみたいなこの美男、ずっと私に満面のスマイルで居続けるわけないし。 ほんとに嬉しそうにニコニコしてる、 ひたすらにね。 「あ、あの…」 「は、はいっ?」 口元を花束で隠してコソコソと話しかけた私に、モデルは真顔になって屈んで耳を傾けた。 「…どこにカメラ隠れてるんですか?」 「カメラ?」 「撮影してるんですよね?」 「…撮影?え?何のことですか?違いますよ」 「へっ!?  フラッシュモブ的なサプライズでは!?」 自分の予想外れにビックリしちゃった私を見て、余計に笑顔を砕けさせてキラキラの顔面オーラを放ってくる。 「ふふっ。  サプライズですが、個人的なものです」 照れながら何でか解らないけれど凄く喜んでいる、ふうに見える。 かわいすぎて困るんですけど…… いったい、この美男、誰なの!? 「すみません、どちら様で―――――」 「副社長!お時間です」 「「 !?!? 」」 私の疑問に被せてきたその渋い声に、 私達は同時にハッとした。 美男の背後から聞こえたので、上半身を傾けて大きな図体に隠れていた声主を見てみると…… あっ、 オールバックのベテラン風な男性が、前手組みで直立してこちらを睨んでいる。 美男に釘付けで全然気付かなかった。 おっかない顔の人だけど…… そちらも、誰? 副社長って呼んでた。 副社長? もしかして、ウチの副社長??? てことは…… 「千馬(ちば)くんなの!?  違っ、千馬副社長ですか!?」 「はい!お久しぶりです、七鳥さん」 爽やかでとろけそうな笑顔全開。 目がくらむ……嘘でしょう? 私の知ってる千馬くんはこんな美男ではないのに???
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