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「……んぁ?」
レアと一緒に狭いベッドで寝てると、外からドンドンと音が聞こえてきた。もう夜も遅いはず。
「え……、こんな時間に……?」
「誰だろう?」
レアは俺より先に音に気付いて、起きてたみたい。にしても、一体誰が……。
「……レア見てきてよ」
「えぇ……、一緒に行こうよ」
「えー、なら、ジャンケンしよ」
「じゃん、け?」
「あー、えっと、……うん、俺が行くわ」
こっちにはジャンケンっていう文化がないんだった。説明がダルくて、俺は恐る恐る扉を開けた。多分あれだ。隣の部屋の人が酔っ払って間違えてるんだ。この前もあったし。
「どちらさんで、うわっ……!」
開けると同時に誰かが俺に抱き着いてきた。……あ、この服って……。
「サっ、サービス残業のつもりですので!!」
つい夜に上司を見かけた時の癖が出てしまった。
「え……?」
ウィザーはずるずると俺の体に沿って、床に膝をつけた。俺が中腰になりつつ、支えようとしたらふいにウィザーは顔を上げた。
「え、酒くさっ!?」
「ろこ……」
ウィザーは全体重を俺に任せたまま、寝息を立て始めた。
「え……」
これって……、人望ない上司が酔った時に家が同じ方向とか言う理由で介抱させられるやつ〜〜。マジで同じ方向って4分の1の確率だかんな。
「慣れない場所だから緊張してたのかな。ロコ見て安心したのかもね」
「ははっ……」
ついそれっぽい理由で介抱を頼んでくる先輩とレアを重ねてしまった。よくないクセがまた出てる。
「とりあえず、運ぶの手伝うね」
「うん……」
本当は部屋まで送り届けたかったけど、俺達より体格もいいし、なによりこの服が重い。そのせいで仕方なく俺のベッドで寝かせることにした。
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