32人が本棚に入れています
本棚に追加
「ロコ」
今日も適当にクソ勇者の部屋の花を変えたりしてると、急に声を掛けられた。足音くらい立てて欲しいものだ。
「なんですか?」
「……その、……花」
あ。やべ。またセンスないとか言われるやつ?あー、前も俺が作ったポスターボロクソ言われたんだよなぁ……。って、それは前世か。
「買ったのか?」
「これは昨日の会食で使った花らしくて、勿体無いからって貰いました」
ウィザーは聞いてきたくせに何も返事はせずに黙っていた。文句言われるよりはマシだけどね。てか、花の飾り方分かんないな……。なんだっけ?3点目立つようにしてーみたいななんか聞いたような?
「……昨日は迷惑かけた」
「えっ、あ、いや、そんな迷惑なんかじゃ……」
まさか昨日のことを謝ってくるとは。まぁ、別に吐かれなかったし……、いや、待て。恩を売ったことは大きいんじゃないか?
「……それならよか「迷惑でした!!!」
そう、俺が今しないといけないことはフラグを立てること。それだけなのだ。それさえできれば、俺の幸せ異世界生活は現実となる。
「昨日の会食、どうでしたか?いい出会いはありましたか?」
「……王様に何事もなかった」
あー、これは完全に仕事モードだったやつだ。せっかくのフラグチャンスが……。
「昨日のこと誰にも話さないので、その代わり今度俺が可愛い子を紹介してもいいですか?」
「は?」
正直、女の子の知り合いは少ないけど、国王の周りにいる子達とかに声を掛ければなんとかなりそう。それに、顔がいいからウィザーのファンって多いし……。
「なんで?」
「えっと、……あの、……ウィザーにも幸せになって欲しいなって!」
「いい。いらない」
「でも、ほら……、あの、ウィザーは優秀だから魔王倒すだろうし、そしたらその後幸せをあの、」
うわー、プレゼン下手すぎ。あー、もー、やんなる……。
「いらないから」
「……すんません……」
あーあ、なんか昔もこういうことあったような……。あ、契約の更新しに、ってダメだ。前世のことは思い出さないんだった。
「……そろそろ魔王討伐の編成を組む」
「あ、そうなんですね」
てことは、絶好の「この戦いが終わったら、結婚しよう」チャンスなのに。やっぱそう簡単にいかないよなぁ……。
「……ロコはなんで俺に幸せになって欲しいんだ」
おおっと……、これは……。素直にフラグ立てたいから!とは言えない。でも、こういう時はやんわり濁すのが勝ちだ。
「幸せになって欲しいのに理由なんていりますかね……?」
ブラックすぎて辞めてった先輩が最後に教えてくれた。それっぽい根本を突きつけて、やんわり逃げる。碌に考えず批判する上司に有効。
「……っ」
「あっ、花瓶に水っ……。あ、ちょ、行ってきます!」
やべやべ、水入れ忘れてた。これだからペット飼うなって親に言われてたんだよなぁ〜。
最初のコメントを投稿しよう!