1.

4/5
前へ
/10ページ
次へ
「すみません。実はこのお金で自宅の屋根を修理しようと思ってるんです。雨漏りするようになってしまって」  ペンギンは丁寧に頭を下げる。 「そうですか。ではパンフレットだけでも受け取っていただけますか。いつかご興味が出た時に参考にしていただければ…」 「ええ、いいですよ」  俺は何とも言えない気持ちで、二人のやり取りを聞いていた。  そしてこの後、手続きを終えて帰っていくペンギンの後ろ姿を、上司と一緒に見送った。  俺はずっと感じていた違和感を、それとなく上司に訴えてみた。 「あの人、ペンギンっぽいですよね」  “ペンギンっぽい”という表現を使ったが、清水さんの姿は、俺にはペンギンそのものにしか見えない。 「そんなことを言うのは失礼だよ、笹山くん」  上司が毅然とした態度で言う。 「すみません」  謝りながら、こういう反応をしたということは、上司の目にも清水さんはペンギンに見えているんだなと考える。  他の行員も、上司と同じ態度で清水さんに接している。ちょっと不思議だが、この町では、これが普通なのだろうか。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加