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「すみません。実はこのお金で自宅の屋根を修理しようと思ってるんです。雨漏りするようになってしまって」
ペンギンは丁寧に頭を下げる。
「そうですか。ではパンフレットだけでも受け取っていただけますか。いつかご興味が出た時に参考にしていただければ…」
「ええ、いいですよ」
俺は何とも言えない気持ちで、二人のやり取りを聞いていた。
そしてこの後、手続きを終えて帰っていくペンギンの後ろ姿を、上司と一緒に見送った。
俺はずっと感じていた違和感を、それとなく上司に訴えてみた。
「あの人、ペンギンっぽいですよね」
“ペンギンっぽい”という表現を使ったが、清水さんの姿は、俺にはペンギンそのものにしか見えない。
「そんなことを言うのは失礼だよ、笹山くん」
上司が毅然とした態度で言う。
「すみません」
謝りながら、こういう反応をしたということは、上司の目にも清水さんはペンギンに見えているんだなと考える。
他の行員も、上司と同じ態度で清水さんに接している。ちょっと不思議だが、この町では、これが普通なのだろうか。
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