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「――もうすぐ卒業だね……」
彼女がそう言った瞬間、胸に何かが閊えたような気がした。
「え? ああ、うん。 そう……だね」
またこの感じだ。俺はこの会話を知っている気がする。
「そしたらしばらく会えなくなっちゃうね」
笑顔を浮かべてはいるのものの、声色はどこか元気がないように感じる。
そして俺の次の言葉は確かこんな感じだ。
「まぁ連絡はいつでも取れるんだから、そんなに気にすることないんじゃない?」
「そう、だよね……」
なぜだか少し寂しそうな表情の彼女。そんな姿に、俺は動揺していた。
この光景を見たことある気がするから、ということもあるだろう。けど、それよりもなぜだろう、よくわからない感情が込み上げてくる。
胸が苦しい。彼女のことを考えていると、なぜかそんな気持ちでいっぱいになる。
「だっ、大丈夫っ。いつだって会いに行くよ、絶対に。約束する」
気づけば感情に身を任せてそう言っていた。どうしてだろう。
それはおそらく彼女が、俺にとって特別な何かだったから。
「うん、わかった。待ってるからね――」
彼女は寂しげな笑顔のまま、どこか遠くを見つめているようだった。
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