オモイデカノジョ。

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「昔はいつも一緒だったよね」  そうだ、いつもそばにいて楽しそうに笑っていた。そんな彼女の笑顔に、惹かれていた。 「私が落ち込んでいるとさりげなく励ましてくれたりさ」  彼女にはいつも笑顔でいて欲しかったんだ。 「将来の話なんかもしたよね」  この先もずっと一緒にいたかったから。ずっと隣にいて欲しかったから。 「ねぇ、覚えてる……? 私のこと。ずっと前から、キミが好きだったんだよ?」  笑顔は決して崩さず、だけども涙が止まることはない。  彼女とのたくさんの記憶が、思い出が、彼女を見るたびに溢れ返る。  いつかの彼女との懐かしい日々が、感情と共に蘇っていく。 「うん……、覚えてるよ」  お互いに涙を流しながら、優しい笑みを作る。  俺はずっと、彼女が好きだった。  いつからかなんてわからないけど、気づいたらそうだった。  当たり前のように隣に君がいて、楽しそうに笑ってくれる。  そんな日々が、たまらなく愛おしかった。  全部、大切な思い出。 「……また、会いに行くから」 「うん」 「今度はちゃんと伝えるから」 「うん……」 「だから、待ってて。もう絶対に、忘れないから」 「うんっ……!」  再び瞳に溢れ返る滴をぼろぼろと零しながら、それでも彼女はずっと笑みを浮かべ続けていた。 「じゃあ、またね。待ってるからっ――」  途端に景色が色褪せていく。  風の音も、草の匂いも、握りしめた拳の感覚も、全てが徐々に薄れていく。  そろそろ夢から覚める時間だ。  今度は絶対に忘れない。  この感情を、想いを、彼女のことを。  そしてもう一度彼女に伝えに行くんだ。  そうしたら多分、彼女は笑ってこう言うんだろう。     『――また、会えたね』
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